EvosyNoiniNot Small Fl00der
Зарегистрирован: 29.09.2013 Сообщения: 12 Откуда: Esbjerg
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Добавлено: Пн Окт 07, 2013 6:06 am Заголовок сообщения: Glxnfc
Hulyxiogc |
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入って来て見回せば、まずあの席が目につくはずだ。バッグがあるから先客のいることは分かるだろうが、他のテーブルよりはゆったりしている。 剃刀を置いて指を何度も開いたりする。
「井上君です。その、今日、出張から戻った奴《やつ》ですよ」 枝ぶりのいい大木が、建物に寄り添うように立っていて、その枝の一本から、二階の窓の一つへ楽に手が届きそうに見える。
「部屋でやったっていいんだけどさ」 マリは、振り向いた。ポチがそっぽを向いて欠伸《あくび》をしている。
「そうだってな」 「理論上の可能性よ。名探偵は非情でなきゃね」
あたり一面緑で人間の姿も見えない。北海道のようにもともと孤独な空間に人間の姿が見えないのはそれほど驚かないが、ここだと本来人間がいるべきところに人間がいないという感じでいっそう雨の中の静寂が身に沁みる。あたり一面、きれいに整備された水田、きれいに植林された杉林、と人の手が加えられた人工的自然があるにもかかわらず、その主人公の人間の姿だけが見えない。この風景はどんな大自然の風景よりも寂しく、美しいものだと思う。 「そうですか。しかしあの方も全く妙なことを考えるものですね。まあ、私も秘書だった時代には、ずいぶん妙なことをやらされたものですが……」
林の坂道をのぼりきると目の前にその資料館が姿を現わした。八角形をしたこうもり傘のような洋館である。錦絵のなかの鹿鳴館のような雰囲気だ。この資料館は明治十二年から大正三年まで三国町のこの山の上にあった竜翔小学校の建物を再現したものだという。五層八角の建物で明治初年、三国にやってきて三国港改修工事の指導にあたったオランダ人のゲ・ア・エッセルが設計したものだそうだ。そしてこのエッセルは、あの、だまし絵で知られるM・C・エッシャーの父親なのだという。思いもかけないところで明治日本と西欧の出会いの現場に触れたことになる。こういう博物館というのも、たまにはのぞいてみるものだ。 「ああ良かった! もうパーティの方へいらして——」 |
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